「明日はクジラの海だから早く寝るぞ!」
実家から車で一時間。
幼い弟と私を父がクジラの海へ海水浴に連れていってくれた。
夏休みの町内子供会では、クジラの海の目の前の青いクジラの駅を目指して、海岸線を走る電車に揺られながら皆はしゃいだ。
果てしなく広がる海で、これからはじまる冒険に期待と緊張が重なり合っていた私は、そこにはとてつもなく大きな青いクジラが棲んでいるんだと信じていた。
砂の上のキャンプファイヤーが近付くと、オレンジ色の巨大な太陽が接近してきて、空も海も私たちもゆらめいて照らしながら海の中に消えていった。
青いクジラは現れなかったけれど、海は特別な場所だった。
高校に入学後クラスメートと青いクジラの駅に降り立ったとき、胸の痞えがようやく取れた気がした。
駅の名前はその土地の地名で「鯨」の文字が入っていて、駅舎の壁には当時のままの大きな青いクジラの絵が残されていた。
そうだったんだ。
父は、幼い弟と私にわかりやすく「クジラの海」と呼んでいたんだ。
私がずっと鯨に憧れ続けているのはクジラの海があったから。
父も驚いているだろうな。
数十年が経ったいま、クジラの海のすぐそこに暮らしているなんて。
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